三橋ニルスと量的緩和1409-3-499-9/5メルマガブログ転送

新世紀のビッグブラザー三橋貴明ブログ
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/

(見出し)
「ECBの量的緩和

(引用開始)

 

(前略)
さて、何となく久しぶりに感じるユーロの話題ですが、6月にECB(欧州中央銀行)がマイナス金利を導入、つまりは、
 「欧州の各銀行が、ECBの当座預金に預金すると、ECB側が金利をとる(手数料をとる、と思えば理解しやすいかも)」
  政策を開始したわけですが、わたくしはその時、
 「民間の資金需要が不足している状況でマイナス金利を導入しても、欧州の各銀行がECB当座預金ではなく、ユーロ主要国の国債を買うだけ。国債金利、特にドイツの国債金利が下がるだろう」
  と、予測しました。
 

 わたくしは政局に関する予測は外れることが多いのですが、経済関係は結構当たります。
 

 ドイツの国債金利は、ダダ下がりに下がっていき、ついに10年物で1%を割り込みました(現在は0.96%)。日本、スイスに続き、三カ国目となる「長期金利1%割れ国」の誕生です。
 

 国債が買われるとは、要するに民間に貸し出されていないということです。欧州の各銀行は手元の資金について、
 「ECBの当座預金に預けると金利を採られるのなら、国債を買うとしよう」
  という行動に出たわけでございますね。
 

 結局、マイナス金利を導入してすら、欧州の各銀行から民間に資金が貸し出されず(注:「十分に」貸し出されず)、モノやサービスの購入(=消費・投資)が増えず、物価が上昇しない状況が続いています。14年8月のユーロ圏のインフレ率は、ついに0.3%にまで落ち込んでしまいました。全体で0%を割り込むのも、時間の問題でしょう。
  

***(中略)
とは言え、上記報道を見ると、
 「やっぱり、ずれているなあ・・・・」
  と、思わざるを得ないのです。何の話かと言えば、ECBによる債券購入(量的緩和)の「利点」の部分です。
 「債券購入は域内のインフレ期待低下を防ぐ」
 「株や社債など他の資産の価格を押し上げることが可能」
 「QEが大企業に資金調達の道を提供すれば、銀行融資や社債市場を中小企業が利用しやすくなる」
 「QEは銀行が保有する国債の価値を高め資本調達を容易にし、バランスシートの一段の修復に役立つ」
 「流動性の増加はユーロ安につながり輸出企業を支援する 」
 

 うんっ! やってみればいいです。QEが「銀行のバランスシート改善」以外に、果たしてユーロ圏の「所得拡大」に役に立つのかどうか、これはやってみなければ分かりません。
 

 お分かりでしょうが、上記の「利点」は、
 「民間企業が資本・資金を調達したがっている」
  という前提になっているわけです。すなわち、セイの法則です。
 

 民間がお金を借りたがっているにも関わらず、期待インフレ率が低く、実質金利が高止まりしているため、お金が借りられない。という環境があるならば、量的緩和は大いに効果を発揮するでしょう。
 

 とはいえ、本当に民間はお金を借りたがっているのですか?
 

 企業の経営者として考えた場合、投資行動は論理的には投資利益と実質金利の関係で決まります。すなわち「投資利益>実質金利」となるならば、企業経営者は銀行からの借入と投資を決断するでしょう。量的緩和は、上記式の実質金利を引き下げる効果はあります。
 

 とは言え、物価上昇率が極端に落ち込んでいたり、あるいはデフレ化している国で「充分な投資利益」が本当に得られるのでしょうか。
 

 分かりやすく書くと、「儲かるのか?」という話です。
 

 上記問いの答えが「儲からない」であれば、実質金利がどうであろうとも、企業経営者は投資を決断しないでしょう。少なくとも、わたくしはしません。何しろ、儲からないのです。
 

 儲かるか、儲からないか。最も分かりやすい判断基準は、目の前で仕事(需要)が増えているか否かです。
 

 現在の日本は、「目の前の仕事」が増えず、金利が史上最低の状況にあるにも関わらず、企業の国内投資や雇用創出が遅々として進まない状況です。物価上昇率を見る限り、ユーロ圏も同じ環境にあります。
 

 セイの法則が機能しない環境下で、順番に量的緩和を実施し、「お金は借り入れられるはず」という社会実験をしているのが、現代の世界というわけです。このバカバカしい社会実験を終わらせるには、失敗事例が多数出る必要があるのかも知れません。だからこそ、わたくしはECBのドラギ総裁に、早々に量的緩和に踏み切る決断をして欲しいと期待しているわけでございます。
 

***(後略)

 

(引用終了)

 

(私のコメント)


>失敗事例が多数出る必要があるのかも知れません。…
三橋さんがおっしゃる「果たしてユーロ圏の「所得拡大」に役に立つのかどうか」
という話で思い出すのは「ニルスの不思議な旅」という童話のことです。

ニルスは渚で見知らぬ昔の硬貨を拾うが不要なので海に捨ててしまう。
その晩ニルスは夢の中で繁栄する大都会に迷い込む。
そして町の人に大歓迎され、素晴らしい服や食べ物を見せられ、
ぜひいくらでもいいから買ってくれとせがまれる。
しかしニルスはお金を持っていないので買うことができない。
さては渚で拾った硬貨はこの街のお金だったのかと気がつくが遅かった。
町の人はニルスの話を聞いて泣く泣く去っていく。
夢から醒めてこの話を土地の人にすると、この海岸には昔から伝説があって、
あまりに繁栄しすぎたので神の怒りを買い、海に沈められた大都会があったのだそうだ。
その町のものを誰かがいくらでもいいから買ってくれるとその呪いが溶ける、という話だ。
夢の中の町の人々は必死にカネを使ってくれるよう願うが、なにしろ金を持っている人がいないのだ。
これって何かによく似ていると思いませんか。
夢の中の商人に向かって量的緩和をしても所得拡大しますかね。
それよかニルスがカネを持ってさえいれば良かったんでしょう。


カネのないニルスに売るような馬鹿げたことを信じるのが新自由主義という呪いですね。
あまつさえ安倍政権のように消費税と言う名の罰金でニルスのカネを奪うんだからバカの二乗だ。
安倍政権は夢の中の商人ばかり優遇して国民一人一人の事は考えていないようだ。
量的緩和財政再建なんて言うのは、呪いの世界に住むエリートの妄想で、
つまり夢の中の商人を立派にする話だ。
夢の外にいるカネを持たない国民の幸せには関係がないのだ。
なぜ昨日の三橋さんのお話のように実質賃金のことを考えないのか。
なぜニルスにカネを持たせる政策を打たないのか。
ニルスの童話を読んだ子供なら当然そう思うよね。
欧州のエリートや財務省の秀才たちは金を持っている人が居ないと売れないのだ、
という子供でもわかる話を理解するために失敗を重ねる。
彼ら勉強秀才たちが子供にも劣ると言うのは恐らく新自由主義という呪いのせいでしょうね。
大学では新自由主義という呪いは教えるが、ニルスの童話は教えないからね。
新自由主義共産主義に似ていると言われるが、共産主義の失敗は一億人の命で購った。
新自由主義もその位の犠牲がでないと目が覚めないのか、と思うと厭になるネ。
これから日本も消費税や災害などで失敗事例が多数出るでしょう。
その失敗事例を国民が命と財産、血と汗と涙で尻拭いしていく。
呪いにかかったエリートと庶民の戦いはまだまだ続くようです。


(私のコメント終)