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THE 21 online

2015年09月10日 公開
佐々木常夫(元東レ経営研究所社長)インタビュー

(見出し)
トラブルや逆境に見舞われても心折れることなく仕事に向き合い、成果を上げるには、どういう姿勢や考え方が有効なのだろうか? 公私両面で数多くの苦難を乗り越えてきた佐々木常夫氏に、「強いメンタル」を保持する秘訣をうかがった。本日(2015年9月10日)発売の『THE21』10月号から、その記事を抜粋してご紹介しよう。

状況が過酷であるほど「なんとかなる」と考える

(引用開始)

・状況が過酷であるほど「なんとかなる」と考える
 
 
 
 ビジネスマンの日常にはストレスがつきものだ。
思いどおりに仕事が進まず、イライラしたり、落ち込んだりすることがよくあるだろう。
佐々木常夫氏も、数々の困難な状況に直面しながらビジネスマン生活を送ってきた。
しかし、決して心が折れることはなかったという。そのメンタルの強さの源はどこにあるのだろうか。
 
「第一に挙げられるのは『鈍感力』です。
これは作家の渡辺淳一氏の著書のタイトルでもありますが、人生を生き抜くうえで欠かせないと思います。
他人に何をされても気にしない。
失敗してもいちいち気に病まない。
他人と自分を比較して悩まない。
そうした『鈍さ』が、些細なことで揺るがない強さにつながるのです」
 
 状況が過酷であればあるほど、この力は欠かせないものになる、と佐々木氏は語る。
 
「私の長男は、自閉症という障害を持って生まれてきました。
そして妻も肝臓病とうつ病という2つの病を患い、長年にわたって入退院を繰り返しました。
自殺未遂を起こしたこともあります。その中で、家庭を守り、仕事も滞りなく進めなくてはならない。
鈍感でなくてはやってこられなかったと思います」
 
 その環境下で、常に心に念じてきた言葉が「なんとかなる」だった。
 
「今は大変でも、きっと未来はなんとかなる。そう思っていると、その場を切り抜けるアイデアが湧いてきます。
どんな状況でも活路を見出す力は『楽天性』と呼べますね。
鈍感力と楽天性が、心が折れないための両輪になると言えます」
 
 

・「人生は思いどおりにはならない」と割り切る
 
 
 
 この両者を保つ基盤として「受容力」を持つことも重要だ、と佐々木氏。これは母親の教えだったそうだ。
 
「母は27歳で夫を失い、働きながら4人の子供を育てたのですが、いつも笑って、愚痴一つこぼさない人でした。
そして、よく『運命を受け入れなさい』と語ってくれました。
確かにそのとおりで、個人の努力でどうにもできない運命は受け入れるしかありません。
思いどおりにならない場面が人生には多々あることを認められるようになれば、
その状況でのベストを尽くす覚悟が生まれてくるのです」
 
 一方で、頑張りすぎるのも危険だとも指摘する。
 
「限界を超えるほどのストレスを受け続けると、心が擦り切れてしまいます。
もう無理だと思ったら、そこから『逃げる』ことも必要でしょう。
苦しんでいる渦中では自分が限界にいるか否かもわかりづらいものですが、
信頼できる人に状況を話して、客観的な視点からの意見をもらうことが大切。
そうした相談相手を常に持っておくことですね」


 

・「良い面」だけに注目すれば人間関係の悩みも消える
 
 
 
 鈍感力と楽天性、そして受容力。これらは、ともすれば仕事から手を抜く言い訳にされるかもしれないが、もちろん、佐々木氏が言うのはそういう意味ではない。
 
「どんなことにも良い面と悪い面があるもの。そのうちの良い面だけを活かすべきです。
たとえば鈍感力は、他人への配慮を欠いたり、反省せずに間違いを繰り返したりといった失敗にもつながるかもしれない。
楽天的だと、呑気に構えすぎて悪い結果を生む可能性もある。こういうことは、当然、避けなくてはなりません」
 
 どうすれば、良い面だけを活かすことができるのか。
 
「それには、目的を明らかにすることです。鈍感力を持つのはなんのためか、という目的です。
心を疲弊させず、成果を生み出し、良い人生を送るために、鈍感力が必要なのです。
そこを見定めておけば、良い面だけを活かして行動できるはずです」
 
 良い面だけに焦点を当てる考え方は、他人と接するときのセオリーでもある。そうすれば、人間関係で悩むことも減る。
 
「よく『佐々木さんは誰をお手本にしてきましたか?』と聞かれるのですが、私は『全員です』と答えます。
どんな人にも良い面と悪い面がありますから、どんな人についても良い面に目を向け、そこに好意と尊敬を持ってきました。
そもそも、『この人は良い人だ』『この人は悪い人だ』と分けて、良い人とだけ接したいと望むのは、会社員には不可能でしょう。100%良い人も、100%悪い人も存在しない。誰に対しても良い面に注目したほうが多くを学べますし、ストレスも減るはずです」
 
 
 
・心を強くするための「手帳」の使い方
 
 
 
 以上のような考え方を習慣に落とし込み、実践し続けるために、佐々木氏が活用しているのが「手帳」だ。
 
チャーチルの『悲観主義者はいかなる機会に恵まれても困難を見つけ、楽観主義者はいかなる困難であっても機会を見つける』という言葉のように、本を読んでいて『良いな』と思った言葉などを手帳に書き写しています。手帳は常に持ち歩いていて、電車の中など、ちょっとした時間に開く。人間は忘れる生き物ですから、何度も確認することで初めて頭の中に定着し、行動にできるようになるのです。
 
 手帳を開くごとに『鈍感力』という言葉を目にすれば、些細なことを気にする自分を戒められます。『身体を壊さない』という言葉を見れば、オーバーワークを防げます。こうして自分をコントロールすれば、いかなるときも心身ともに健かな状態を保てるでしょう」
 
 身体を健康に保つことも、マインドを健康に保つために欠かせない重要な要素だ。
 
「健全な肉体に健康な精神が宿る、とよく言いますね。
これは真実で、体調が悪いと、良い面に注目する力や活路を拓く力が鈍るものです。
ですから、私は毎日ジョギングをしたり、ジムでトレーニングをしたりして、身体を鍛えてきました。
今はウォーキングにしていますが、1日に1万5,000歩くらいは歩くようにしています」
 
 この習慣は、もともと、家族を支えるために始めたものだった。
 
「自分が倒れたら家庭が崩壊してしまうと思っていましたから、
基礎体力をつけ、病気にならないように細心の注意を払ってきたのです。
時間をムダなく使い、きちんと休むことも心がけていましたね。休息もまた、心身の健康維持に不可欠ですから」
 
 
(第一に挙げられるのは『鈍感力』です。
常に心に念じてきた言葉が「なんとかなる」、そう思っていると、その場を切り抜けるアイデアが湧いてきます。
どんな状況でも活路を見出す力は『楽天性』と呼べますね。
鈍感力と楽天性が、心が折れないための両輪になると言えます」

この両者を保つ基盤として「受容力」を持つことも重要だ。
個人の努力でどうにもできない運命は受け入れるしかありません。
思いどおりにならない場面が人生には多々あることを認められるようになれば、
その状況でのベストを尽くす覚悟が生まれてくるのです」
もう無理だと思ったら、そこから『逃げる』ことも必要でしょう。
苦しんでいる渦中では自分が限界にいるか否かもわかりづらいものですが、
信頼できる人に状況を話して、客観的な視点からの意見をもらうことが大切。
そうした相談相手を常に持っておくことですね」


・鈍感力と楽天性、そして受容力。

仕事から手を抜く言い訳にされるかもしれないが
「それには、目的を明らかにすることです。鈍感力を持つのはなんのためか、という目的です
心を疲弊させず、成果を生み出し、良い人生を送るために、鈍感力が必要なのです。

そこを見定めておけば、良い面だけを活かして行動できるはずです」
身体を健康に保つことも、マインドを健康に保つために欠かせない重要な要素だ。
基礎体力をつけ、病気にならないように細心の注意を払ってきたのです。
時間をムダなく使い、きちんと休むことも心がけていましたね。
休息もまた、心身の健康維持に不可欠ですから」
 


(後略)

 

(引用終了)

(私のコメント)

この人の話は現実的、実務的、実際的にとても重要だ。
「鈍感力」とは簡単に言えば「先の事をあまり考えない」「過去をくよくよ考えない」と言う事だ。
前に話した「上機嫌、肯定思考」と同じだし、落語の「江戸っ子はサツキの鯉の吹き流し」と同じものだ。
「考える事の9割は起こらない、考える事の9割は妄想」もそれだし、仏教の「煩悩の火を消せ」もそうだ。

古くは「日々新たに、又日に新たなり」も同じだろう。
この句は儒教の経典の「大学」の中でも特に有名な言葉だ。
古代中国、殷の伝説的名君湯王(紀元前18世紀)が毎日使う手水の盥(たらい)にこの銘辞を刻んで日日の自戒とした、と伝えられる。
朝顔を洗う時、垢を落とすように心を白紙に戻して新しい気持ちでその日一日に立ち向かうのだ。

何千年の昔から人間の生き方のノウハウは同じものだ。

なお、脱線するが、人は志(こころざし)を持つことが大事なのだが、それだけではだめなのだ。
志を一日に分解して、目標をたてるのだが、この目標は具体的に自分が達成できる範囲のものでないといけない。
少しの努力で出来るような目標でないといけない。
そして、目標を達成したら大いに自分を褒めることだ。
普通人は目標を持つと、達成して当然、達成しなかったら自分にダメ人間認定という罰を与える。
これでは嫌になって長続きしない。
つまり、目標達成に失敗しても「鈍感力」で楽天的に対応するわけだ。

ところで、ユングという有名な心理学者が居るが、その人は人間の「無意識」を研究したので有名だ。
余談だが、内向型と外向型に人間を分類したのもこの人だ。
人間の考える事と言うのは8割以上無意識の分野で行われ、それが意識のフィールドに上がってくるメカニズムだ、と言っている。

話は飛ぶが、フランス革命の中心思想である「啓蒙思想」は人間の理性に全幅の信頼を置くのだが、
その理性は実は無意識下にあるというわけだ。
啓蒙思想からサヨクは生まれ、サヨクと言うのは人間の理性で全てのことを取り仕切ろうとするのだが、
ユングの考えでは理性なんて全然アテにならないのだ。
なぜアテにならないかというと、その無意識というのは気分や感情、不安や恐怖、焦りなどの支配下にあるからだ。

だから、人間の思考というものは基本的にそういった理不尽な非合理的、非論理的な感情や情緒から逃れられない。
サヨクが結局暴力に走り、共産主義で一億人以上殺したのは論理的、合理的に理性が動くと勘違いしたからだ。

「鈍感力」はそう言う感情に裏打ちされた理性の思考を是正させるチカラがある。
なるべくそう言う感情を無くして冷静に考えれば活路も見いだせる。
心を空っぽにしてやれば無意識が感情から離れて動き出し「知恵」が意識の部分に浮かんでくるのだ。
知恵を働かせれば「その場を切り抜けるアイデア」もどんどん出て来て又うまく回転してゆく。
禅宗で座禅を組むのは理屈抜きの「知恵」を出すために心を空にする必要でやるのだ。

また、この人は別に良いことも言っている。
「人は良い時だけ見ろ」という。
嫌いだ、と思うとますます嫌いになる、良い面を見るようにすると、こちらの心が冷静になる。
人のよい面を見るのは相手のためでなく、精神的に自分に都合がいいからでもある。

それと、「鈍感力は手段だから、目的化してはいけない」
これも色々内容があって面白いのだが、書くと長くなるのでここまでにします。

最後にもうひとつだけ、追加します。
一般に人は物事を考えるのは人や世の中がうまく思うように動かない時だが、
そういう感情的な思考は考え始めると増幅する性質がある。
そして、増幅してゆがんでしまった思考でも、本人は極めて冷静な合理的論理的な正しい思考を行っていると信じている。
そうなると、考えがどこまでも曲がってしまうことにも気がつかないし、知恵も湧いてこない。
これをどうすれば避けることが出来るか、というと、一つ方法がある。
それは自分を客観視することだ。
「今自分は感情で増幅された思考を繰り返ししているな」というような風に観察して自分にいうのだ。
もうひとりの自分が斜め上から見ているような感覚だ。
これで感情にブレーキが掛かり、心が感情の増幅で暴走するような事は避けられる。
このやり方は野球のイチロー選手がやっている方法だ。
「鈍感力」とはこういったことの別の表現でもあるのだろう。
まだ、書きたいことはあるのだが、この辺でやめておきます。

 

(私のコメント終)