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わたなべ りやうじらうのメイル・マガジン「頂門の一針」4008号
        2016(平成28)年5月5日(木)子どもの日

          米「噴火マグマ」は危険域:平井修一
(私のコメント)

米国の経済指標は失業率や住宅着工率などそれだけを見ると、かなり良い。
経済指標がいいから、経済状態は良好と判断して、FRBは利上げをしようとしている。
ところが、実態は下記のとおりで、つまり経済格差が大きいために指標だけでは実態が見えないのだ。
簡単に言えば、全然別の国が同居しているとみればいいのだ。
二つの国を足して二で割って平均を出しても実態は違うのだ。

一方の国はウォール街など金融を中心とした富裕層だ。
記憶だけなので数字が違うかもしれないが、2割の人が8割の富を持っているような感じの国だ。
そして中間層が居なくなり、2割の富を8割の貧困層が分かち合っている、というイメージだ。
一番の問題はこういう国は愛国心が生まれず、連帯感もなくなることだ。
特に富裕層はグローバリズムを信奉するから国の一員である、という考えが薄くなる。
アメリカが今どうなっているか関心が薄いからトランプ候補が出てきて慌てている。
何百億円何千億円を使ってテレビコマーシャルを打てば思い通りになる、とタカをくくっていた。
テレビコマーシャルを打てば打つほど逆にトランプ支持は増加した。

国の支配層と民衆が離れる現象は、国が亡びる前に出てくる現象でこれが一番危険だ。
こんどパナマ文書で企業や個人の租税回避が問題になっている。
パナマ文書はタックスヘイブンと言っているがタックス(税金)回避だけでなく、カネの持ち主が誰か分からない、つまり「匿名性」が特徴だ。
その匿名性が今回どの程度暴かれるかが焦点だ。
カネの持ち主が誰かわからぬようにする、ということは分かっちゃうとまずいことが持ち主にある、ということだ。
ただし、タックス(税)について言えば、これは合法的なもので、いわゆる節税にあたるものだ。
だから、逆に会社が行わないと株主から文句を言われることになる、というようなスジのものだ。
また、匿名性もそれ自体は合法で、パナマやケイマンなど当事国が保護しているのだから仕方がない。

ではタックスヘイブンのどこが問題か、というと「道徳的におかしい」ということだ。
その道徳的とは愛国、国家帰属意識、共同体意識、仲間は助け合おう、という徳目に対しておかしくないかい、ということだ。
貧困層(ここでは富裕層以外、という意味で使う)は案外愛国的でおとなしく税金を支払い、おとなしく兵役を務める。
そういう人たちから見てタックスヘイブンを使い、パナマ文書で暴かれる富裕層をどう見るか。
たとえ合法であっても税金回避したり名前を隠したりする富裕層を敵視するのは自然の気持ちだろう。

大統領選挙ではトランプ候補が共和党候補に決まったようだが、これは下記記事の実態がそうさせたのだ。
日本も米国と同じような政策を真似している以上、同じ様なことになるのではないか。
それとは別に、日米関係の将来を考える意味でも相手の実態をよく知っておく必要がある。
また、日本社会の将来を考える上においても「以って他山の石」とすべきだ。

(説明)
他山の石以て玉を攻むべし タザンノイシモッテタマヲオサムベシ

よその山から出た質の悪い石でも、自分の玉を磨くのに役立てることができる。転じて、他人の誤った言行でも、自分の修養の助けとなるということ。

(私のコメント終)

(見出し)

米「噴火マグマ」は危険域

(要約して引用開始)


(前略)

キヤノングローバル戦略研究所は2015年12月に、シンポジウム「地球規模の公共プロジェクトの必要性とBRICS Bank」を開催した。以下は同シンポジウムでの講演者のひとりJeffrey Steinberg氏(Editor in chief of the Executive Intelligence Review=米国の週刊ニュースマガジン)の講演「米国経済の実情」からの抜粋である。
戦後の米国経済の流れ、そして現在の問題点が実に良く分かる。トランプがなぜ人気があるのか、サンダースを若者が支持する理由なども分かってくる。短くしたが、それでも長い。ご寛恕を。


<私はこのプレゼンテーションの中で、まず最初に悪いことばかり申し上げます。しかし、その悪いニュースの中にもいろいろとこれからわれわれが期待できるような、本当はもっと昔に実施してもらいたかったような政策変更が、アメリカで起こるのではないかということもお話ししていくつもりです。

失業率の実態
アメリカの失業率はここ2年間に10%から7、8%へと下がり、最新のレポートでは、10月の失業率は大体5%まで下がっているといわれています。5%というのは「完全雇用」ということになります。

しかし、その労働統計局のデータをよりしっかりと見ていきますと、まずは最初に、彼らがいう労働力と、実際の18歳から67歳の生産年齢人口の間に、大きな違いが見えてきます。

(中略)

しかし、それに加えてさらに9400万人ぐらいの人たちがいるのです。彼らは18歳から67歳までの間で仕事をしていない人たちです。この9400万人の人たちは、すでにもう仕事を見つけることも諦めてしまった、あるいは決して仕事を見つけることができないということで、労働力人口の中にはカウントされていないのです。こうした人たちは統計の中には出てこないのです。

このような人たちを含めて生産年齢人口全体を見て、その中でもフルタイムの雇用を探している人たちを見ますと、そういう人たちが職に就けないということで、本当の失業率は10%を超えることになるのです。

その他の要素として、実際にアメリカの中で働いている人、あるいは労働力人口の中に入っている人、そういうふうに計算されている人たちの40%が年間所得1万5000ドル(165万円)以下であるということが挙げられます。


そういう人たちはフルタイムで週に35時間から40時間働いているが、最低賃金で働いている。あるいは、フルタイムの仕事が見つからず、パートタイムなどの不完全就業の状態にあります。

アメリカの国民中で2300万人のたち、つまり生産年齢人口の10%ぐらいになりますが、そういう人たちの年間所得は5000ドル(55万円)以下という失業者あるいは不完全就業者を見ていきますと、そういう率は大体フランクリン・ルーズベト(FDR)が大統領に就任した大恐慌の初めのころ(1930年)に似ています。

(現在の)状況はさらに悪化してきています。というのは、たくさんの人が長期的に失業しており、成長経済に参加するためのスキルが減ってしまって、事実上の恒久的失業者となっているのです。

*生活水準の低下

それからもう一つ、生活水準の低下という問題もあります。人々の生活がアメリカ国民の中でもますますひどくなっています。このことは、アメリカ経済の性質変化を反映したものです。

第2次大戦が終わり、そして50年代、60年代を見ますと、アメリカの労働力人口の40%が何らかの形で生産的な経済に参加していました。

例えば製造業だとか、建設業だとか、鉱山つまり鉱山業だとか、物を生み出す産業に就いていた。それがどんと減っています。

アメリカの工業力、産業力がアウトソースされてしまっているので、本当に物を生み出す活動、つまり鉱山、建設、製造業ですけれども、実際に労働力人口のうち、このような物を作り出す仕事に従事している人たちはわずか12.8 %にすぎません。そして製造業は8.2%にしかすぎないと。

アメリカ経済の92%が間接的なもの、あるいは非生産的なものです。間接部門すべてが非生産的とは言いません。しかし、アメリカの全労働人口の中で製造業に関わっているのがわずか8%にすぎないことを考えた場合、重大な変化があったと思われるでしょう。

かつて、アメリカの中産階級世帯のかなり大きな部分はブルーカラーの世帯でした。1970年代までは、デトロイトやミシガンの世帯の平均所得はアメリカで最も高いものでした。しかし今のデトロイトやミシガンには、第二次世界大戦で荒廃してしまった中央ヨーロッパの都市やゴーストタウンになっているような所が見られます。

このようにアメリカ経済の性質そのものが変わってしまった。 そのため、賃金をかせぐ力だとか、そういうものがどんどん破綻し、そがれていきます。ブルーカラーとして仕事をしていきながら、中産階級でいるとうことはもはや不可能になってきています。

製造業において、いろいろ技術進歩や革新的なイノベーションも起こっていますが、そういう活動の多くは国防省や宇宙航空産業などのセクターで起こっています。実際に製造業に就いている人たちの10%が国防関係の仕事についています。

そういう人たちが関わっているのは、例えばF35だとか、次世代のオハイオ級潜水艦だとか、その他軍のための重機、例えば国防総省や海外に売るための物です。

それを除きますとアメリカの人口の中で生産的な活動に従事している人、近代経済を効率的に運営していくために必要な仕事に就いてる人たちは本当に少ないことが分かってきます。

(中略)

*金融セクターの問題 ~ グラス・スティーガル法の廃止
金融セクターを見ますと、21世紀初頭のブッシュ政権の初期からオバマ政権の7年の間に、なぜ著しい投資の引揚げが起こってきたのかということが分かると思います。グラス・スティーガル法が1999年に廃止されました。

フランクリン・ルーズベルトが1933年に導入した同法は、大恐慌時代に大き過ぎて潰せない巨大銀行を解体し、商業銀行、投資銀行、保険会社へ分離するための法律でした。

同法の成立から廃止までの66年間に もちろん何度か銀行が倒産したり、株式市場が破綻したり、1950年代や1990年代の初めはリセッションなどがありましたが、実際に2008年(リーマンショック)に起こったあれほどのひどいことは起りませんでした。

しかし、同法の廃止からリーマン・ブラザースによる2008年のあの危機の間、6社のアメリカ大手銀行が非常に支配的なりました。それらの銀行の商業銀行部門は同法で規制していた業態の分離から解放されたので、さまざなギャンブル的なレバッレッジの高いデリバティブ金融商品)のほうに投資をしていってしまったのです 。

そのため商業銀行の元々の目的である実体経済への投資からはどんどんと資金を引揚げて、その資金デリバティブなどに投資していったのです。

(中略)

この7年の間、アメリカではゼロ金利政策がとられてきたので、その結果、引退した人、引退後の準備のために長期間にわたり貯蓄してきた人たちなど、大体2~4%ぐらいの利子を見込んでいた人ちが、実際には利子に頼ることができなくって一番被害を被っているのです。

あるエコノミストによと、この7年間にゼロ金利の制度があった故に、引退者あるいは引退のために準備をしている人たちの収入損失はおよそ10兆ドルにも上っていると言っています。この10兆ドルはまさに購買力です。それは家計から実体経済へ流込むはずのお金でした。

*社会の基本構造の崩壊

FDIC(連邦預金保険会社)の副会長のトーマス・ホニング氏は、グラス・ スティーガル法を復活させ、それに加え他のいくつか対策をとらなけば大暴落が再び起こると言っています。そして現在の制度を根本的に変えなければ、再発は避けられないと。

ドッド・フランク法案やボルカー・ルールは 、ウォールストリートのロビーイングによりいろいろと浸食され、骨抜きにされてしまって、実際には本格的 な規制は全然行われていません。

そのために社会的な影響が広まっています。その中には、とてもショッキングなレポートがあります。アメリカの疾病予防管理センター(CDC)は2015年8月にヘロインの依存症の急増をレポートしています。

全年齢あるいは全世帯においてヘロインの流行と依存症が増えているのですが、中でも一番増えているのは年収5万ドル以上の世帯です。つまり、アメリカでこれま見たことがないような、社会の基本構造の崩壊現象が起こっているです。

すべてのアメリカ世代をずっと見いきますと、日本でもそうだと思いまが、長い間、子どもたちや孫はもっと自分たちよりもよい人生を送っていくだろうと信じて生きてきた。だから一生懸命働いて、貯蓄をした。そして子どもたちは教育水準も高くなり、物質的な状況ももっとよくなり、レジャーももっと増えるというこを期待していたのです。

が、アメリカで行われたここ4、5年間の調査を全部見ますと、人々は初めて子どもたちの生活状況は自分たちよりも悪くなっていると言っています。

1920年代の終わりから30年代の初め頃の最後の大恐慌以来、アメリカでは人々はそういうことを言ってきていないのですが、今ではそう言われ始めています 。

ニューヨクタイムズの健康に関する記事や、プリンストン大学ノーベル賞受賞者の報告書の中で、中年層のアメリカ人死亡率が増えていることが報告されています。 特に、45歳から54歳までの高等学校の教育しか受けてないという人たちが50代の初めに死亡しているのが、ここ5、6年の間に倍増していると言っています。

ある医師は、現在起こっているほどの死亡率急増は、アメリカの歴史の中で、HIVエイズの流行の初期以外にはなかったと言っています。伝統的な白人の中産階級の死亡率が急増しているということであり、これはヘロインの流行が一番顕著に見られた世帯でもあります。

*若者の失業率の増大

これは本当に危険な状況ですが、今の実際の経済状況により、最も甚大な被害を受けているのは若い人たちなのです。2013年時点で、アメリカの50州のうち30州において、若者のうち、 失業およびフルタイムの仕事が見つからないという不完全就業の若者たちが30%以上もいました。

それは若者の年齢層全体に押し並べて該当することです。高等学校卒、あるいは高等学校からドロップアウトした若者だけでなく、大学卒の若者も含んでいるのです。

私は感謝祭の休暇中、私の甥と連絡をとる機会がありました。彼は2年前にアイビーリーグの大学を卒業したのですが、彼の親は4年間の大学教育のために25万ドルの貯蓄を全部使い果たしていました。

卒業後その彼が仕事を見つけるのに2年もかかったと言っているのです。しかもこれは自分だけに起きた稀なことではないのだと。
アイビーリーグの卒業生で北東部の大きな都市に住んいる人間でありながらも仕事が見つからない。
若者失業率が40%以上という州は五つあります。


(後略)


(引用終了)