1503-2-630-3/2メルマガブログ転送禅宗の本心配事の九割は起こらないその10

本の紹介
枡野俊明(ますのしゅんみょう)著
「心配事の9割は起こらない」
著者は曹洞宗禅宗)の僧侶で日本庭園の設計者

・本の内容目次から
第一章
禅的な不安や悩みの遠ざけ方
第二章
今できることだけに集中する
第三章
競争から一歩離れる
第四章
人間関係が楽になるヒント
第五章
悩み方を変える

(前回の要約)
(カッコ内は私のコメント)

(時々こういう本を読んで心をリフレッシュすることは有意義だ。
直ぐ効果があるというわけではないが、心の持ち方にきっかけを与えてくれる。
それが肥やしとなってじわりと良い方向に向かえば占めたものだ。
運というものは、いい方向に動くと、連続していい方向に回転してゆく。)


1.限りなくシンプルに生きることを目標にする。
(お手本は落語の江戸っ子だ。)

2.心を占める心配事の大半は余計な妄想だから心に妄想が起きたら早い内に切り捨てる。

3.妄想から不安や悩みが生まれるのだが、それを排除する方法は、
「今に集中して生きること」
当面やるべき生活上の作業や仕事に集中する。

4.不安や悩みを無くす方法として昔から行われていたのは神(ご先祖様でもいい)に祈ること。

5.世の中には自分ではどうにもならないことがある。
その時はそれをそのまま受け入れるしかない、悩んでも意味が無い。

6.不安や悩みの一つに人間関係がある。
人間は重層的で多面的だから、人の見方(長所)を変えると悩みを解消出来る。

第二章
今できることだけに集中する

1.当たり前の日常をもっと大切に「ありがたいな」と思って生きてみることだ。
感謝とは現状を肯定的に見ることなので心を転じるのに非常に効果がある。

2.成長する為にはきちんと失敗の原因を見極める休みの時間が必要だ。
禅語のキーワードは「七走一座」(しちそういちざ)「一日一止」(いちにちいっし)。

3.悪いことが起きたり、辛い境遇の時は気持ちが落ち込むが、それは止むをえないし、当然のことだ。
落ち込んだら早く立ち直ろう。

4.心に余裕を作る一番の方法は朝を大切にすること。
毎日一定の早い時間に起きる。

5.他人の価値観に振り回されず、自分のものさしで生きる。
お天道さまに恥ずかしくないかどうかだ。


6.現代はやっている仕事が自分にあっているかどうかを問題にする。
禅語では「大地黄金」という。
今いる所、自分が置かれている場所で精一杯尽くす、するとその場所は黄金のように輝く、と言う意味だ。

7.イライラしたりくよくよ考える心をどうしたらコントロールできるか。
「無心」は浮かんだ思いにこだわらず客観的に見るようにするとやがて消えていく。
妄想をはびこらせてはいけない。

8.夜は考えることが進みすぎるので注意が必要だ。
一旦それに捕らわれると振り払うのは大変だ。
何かの判断も夜にすると間違いが多い。
判断はできるだけ朝に光の中のほうが良い。

第三章
競争から一歩離れる

1.仕事においてはまず人との勝ち負けのこだわりを捨てる。
自分の心に問い掛けてみて「まずまず一生懸命やったな」と感じることができたらそれでいい。
大事なのはその時々の仕事に対する納得感だ。

2.仕事ではまぶしいような才能を持った人がいる。
しかし他人の才能を羨んでも何も始まりません。
それより、自分の出来る努力をコツコツ続ける習慣を身につける。
その習慣によって才能を超えることもできる。
禅の修行の本質も繰り返し続けることにある。
体が覚えてしまう、そこまで繰り返す。
禅宗の公案に「香厳撃竹(きょうげんげきちく)」という有名な話がある。
香厳智閑(きょうげんちかん)というシナ唐代の坊さんが師から与えられた公案(禅問答)が解けず悩んでいたのだが、
ある時掃除をしていて竹の箒に石があたって音を立てた、その音を聞いて悟りを得た、というものだ。
この話は禅宗ではとても有名だ。
コツコツと毎日毎朝掃除をする、それも無心に一心に綺麗にしようと掃除をする、
石が立てた事をきっかけにそれに気がついたのだ。

3.日本人は「おかげ様」という思いやりと感謝の心を持っている。
これは稲作農業から来たものだ。
このおかげさまの意味はご先祖様のおかげと言う意味が元の意味だ。
ひとりで生きているのではなくご先祖様のおかげで生かされている、という気持ちがおかげさまの気持ちだ。

4.良い言葉を使う。
言葉には天地をひっくり返すほどの力がある、と道元禅師が言っている。
相手を慈しみ(いつくしみ)、その心で語りなさい、という。
率直に褒め言葉をかけられる関係、お互いの良い所を認め合えるお付き合いが心を豊かにする。

5.我々はいつも変化の中で生きている。
どんな境遇でも自分を生かすことができる、そこでの体験が将来飛躍のバネになる、と考える。
松下幸之助の言葉「 逆境も良し、順境もよし、要はその与えられた境遇を素直に生き抜くことである」
禅のキーワードは「日々是好日」(にちにちこれこうにち)

6.今日やるべき事は今日やる。
もっとも大事な事は今日ただいまを無心に精一杯の心で生きることだ。
精一杯の心とはコンに只今なすべきことをなす、ということだ。

7.失敗はしたくないが起きる。
石橋を叩いて渡る慎重さがあっても失敗は起きる。
禅語の言葉では「本来無一物」という。
人間は本来何一つ持たずに生まれてきた、そのことを考えれば失敗など問題でないのだ。


8.人は人、自分は自分。
自分には厳しく、人には寛容な姿勢が仕事をうまく進めるコツだ。

9.ものごとは、全て力ずくではどうにもならない。
「流れ」というものがある。
では流れに任せてただ流されるだけでいいか。
そうではなく確固たる自分というものがあって、流れと共に行くのだ。
禅語ではこれを「柔軟心」という。

10.セールスにかぎらず仕事をする上で最も大切なのが「信頼」だ。
巧みな話し方より誠意ある沈黙のほうが大切なのだ。
信頼は沈黙に宿っているので、言葉の巧みさの中ではない。

11.禅の呼吸法について。
禅語の「平常心是道」(へいじょうしんこれみち)はいつも穏やかな心、静かな心でいることを言う。
禅にはまた、「調身、調息、調心」と言う言葉がある。
その意味は「姿勢を整える、呼吸を整える、心を整える。」ということ。
この3つは一体のもので互いに連動しあっている。
一番効果があるのは呼吸法と呪文の組み合わせだ。
ます、姿勢を正して、臍下丹田と言われる、ヘソ下7センチの場所に意識を集中する。
意識を集中したら、お腹にある息を全部吐き切る。
吐き切ることが大事だ。
だから心が収まる。
この時、臍下丹田に意識を集中するのだが、それを足裏に持ってくるともっと効き目がある。
吐き切ったら吸う方は自然に任せる。
有名な禅僧は「怒りの感情は頭まで上げるな」と教えている。
そして、「ありがとさん、ありがとさん、ありがとさん」
と呪文を唱えるともっと効果がある。
「勝って奢らず、負けて腐らず」が平常心だ。

 

 

 

第四章
人間関係が楽になるヒント

1.仏教では人との出会いを「御縁」という。
縁とは何かの原因(因縁)があって今の出会いがある、ということ。
仏教の根本的考え方はあるゆるものが因縁によって生じている、この世に存在している、というものだ。
だから、どんな出会いも偶然でなく、仏様が下さった必然の結果だから、相手に対して感謝の気持を持とうというのが基本だ。

2.縁には良縁と悪縁があって、良縁ならますます良縁が、悪縁ならますます悪縁がついてくる。
では、良縁はどうしたら得られるか。
禅語では「歩々是道場」(ほほこれどうじょう)と言って何をしていても禅の修行だ、というのが基本にある。
この句は非常に有名で、茶道の掛け軸でもよく見かける。
座禅、食事、掃除、洗顔入浴、全て修行だから無心に精一杯の気持ちで取り組む。
つまらない仕事や儲からない仕事だから適当にやる、というようなことは許されないのだ。
これが良縁と悪縁の分かれ道になる。
つまり一生懸命やっている人には一生懸命やっている人の良縁がやってくる。
いい加減にやっている人はいい加減な悪縁がやってくる、ということになる。
見ている人は見ている。
自分も他の人を見ているからお互い様だ。

3.人間関係の最高のコツは「お先にどうぞ」だ。
お先にどうぞ、と言うのは私は二番手だ、ということだ。
普通は俺が俺が、と前に出たがるが一番を求めるより、二番手がもっともよいポジションなのだ。
二番手で自分を磨くこと、知識や技術を身につけ実力を蓄える。
実力のある二番手は最高の強みになる。
もし回りがその実力を認めれば、皆が一番手に押し上げてくれることもある。
その時は皆のタメにリーダーを務めるべきだろう。
「お先にどうぞ」は仏教では布施行と言って人に施しをする、修行だ。
無量寿経と言うお経に「無財の七施」とある。
仏教徒六波羅蜜の修行の一つだ。
教徒の六波羅と言う地名はここから出ている。
1.眼施(げんせ)(優しい眼差しで人を見る。)
2.和顔悦色施(わがんえつじきせ)にこやかな顔で接する。
3.言辞施(ごんじせ)相手を思いやる優しい言葉、感謝の言葉を使う。
4.身施(しんせ)(荷物を持ってやるとか、出来る事を体を使ってしてあげる。)
5.心施(しんせ)(他人と共に喜び、共に悲しみ、他人の気持ちを感じ取る。)
6.床座施(しょうざせ)(席を譲ること、独り占めにしないこと)
7.房舎施(ぼうしゃせ)(来客を暖かく迎えること)

禅宗では特に「和顔愛語」(わげんあいご)といって、穏やかな笑顔、思いやりのある言葉を重要視する。
「お先にどうぞ」はその修業実践とも言えるものだ。
人生は一日一日積み重ねだから、一日をきもち良く「日々是好日」が充実した良い人生になるのだ。
このために「お先にどうぞ」は役に立つ行動規範だ。

(今日はここから)


4.人間関係で注意するところは、自分が正論だと思っても、一方的に押し付けないことだ。
正論を言う時は相手より目線が高くなっている。
そういう関係の中では言葉も通じ合わず、信頼も生まれない。
誰でも自分の意見には少なからず自身を持っているし、正しいと思っている。
そこで、相手の考えも一旦受け止めた上で淡々と自分の持論も展開する、
そうすれば余計な軋轢も生まない。
世の中には様々な意見があるのだから相手の意見を謙虚に聞くことは、自分の考えを広げたり、
深めたりできるし、自分自身を成長させる知恵でもある。
「相手の顔も立てる」「win-winの関係」と言う言葉は人とのつながりには必要だ。

5.人と人との結びつきで大切なのは知識や教養でなく、感性や感覚だ。
感性や感覚を磨くには思考する脳を一旦休ませる事が必要だ。
考えることをやめると、脳が活性化する。
(この本では触れていないが、考える、と言うのは脳の前頭野と言う部分で行われる。
この部分は人間の意識を司る(つかさどる)ところだが、ここは脳のごく一部なのだ。
しかし、人間は意識するところが脳の全体だ、と逆に思っている。
実際は無意識のほうが脳の大部分を占めている。
そこで、意識部分の前頭野を休ませると無意識部分が活性化する。
禅宗の考え方と、大脳生理学や心理学は密接に関係している。
この関係を解説した本を読んだばかりなので次にはその本を紹介したい。
大脳生理学から見ると禅宗の考えかたは理にかなっており、理解も深まる。)
考えることを止めて、脳を休ませるには座禅が一番だが、日中は忙しくてできない。
そこで、許す範囲で「自然を感じながらぼんやりする時間」を取るといい。
禅語に「花に逢えば花を打し、つきに逢えば月を打す。」とある。
花があれば花を味わい、月を見れば月を味わう。
余計なことを考えず、心を空にして体も心も花や月と一体になってしまう。
自然を感じる、と言うのは自分と自然が一体になる、ということだ。
式の移り変わりでもいいし、朝夕の空の変化でもいい。
豊かな感性を取り戻すにはそう言う「無為の時間」を持つことがいい。
豊かな感性は余裕を生み、人間関係にも良い影響を及ぼす。
(意識的に自然を見ると、対象として見るから、自分と別個の対立的なものとしてみる。
西欧の文明は造物主が自然を作ったのだから人間と別個で、人間はそれを観察する立場になる。
だから、自然科学が発達したのだが、反面人間も自然の一部であると言うような一体感は失われた。
東洋の自然観の方が文字通り自然だ。)

6.人付き合いには大事な原則がある。
人付き合いが苦手だ、と言う人は案外多い。
だがその苦手意識を脱却するのはそんなに難しくない。
まず、自分がされて嫌だと思うことは人にしない。
人からされて嬉しかったことは人にする。
これを「許す」「おもいやり」というのだが、
これは論語に出てくる言葉で言えば「恕(じょ)」という。
弟子が孔子に対し「人間が一生守るべき最も大切な事はなんでしょうか」
と質問すると孔子は「それは恕か」と答えた。
恕はこの場合、人を許す、と言う意味になる。
道元禅師は「同時」と言う言葉を残している。
これは、「相手の立場に立つ、喜びも悲しみも自分と同じに感じる。」と言う意味だ。
こういう立場なら人付き合いが苦手だ、ということにならない。

 

(今日はここまで)