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本の紹介


(題名)

広宮孝信著「日本経済のミステリーは心理学で解ける」
第三回


(目次紹介)
広宮孝信著「日本経済のミステリーは心理学で解ける」
第一章;成長と繁栄を運命づけられた世界経済、限界は常に突破されてきた
マクロ経済学の有り様と個人の有り様が非常に高い共通性があること。
第二章;マクロ経済=人間の集合体の心理、限界突破のための理論的基礎
マクロ経済学を知るためには個人の、自分自身の心理について知る必要がある。
第三章;限界突破のための個人心理(準備編)、否定と肯定で分かるあなたの心と脳の仕組み
否定はストレスを産み、肯定はストレスを解除する。
第四章;限界突破のための個人心理(実践編)、費用0円で誰でも作れる究極の社会基盤作り
自らの限界を突破するための方法論

(本文要約引用開始)
第一章;成長と繁栄を運命づけられた世界経済、限界は常に突破されてきた

(内容を一言で要約すると)
世界経済は破綻を繰り返してきたが、その都度それを乗り越えて成長してきた。
今後も成長を続けるだろう。
その成長を実現するためには、技術の発達と経済格差が少ない社会の2つが必須項目だ。
この2つを実現するためには個人および集団の心理的感情的安定が大事だと考える。
そこで第二章以降を人間精神の安定と完成のためにどうすればいいか検討する。

第二章;マクロ経済=人間の集合体の心理、限界突破のための理論的基礎

(内容を一言で要約すると)
経済学以前に個人レベル、集合レベルの心の持ち方を研究すべきだ。
現在の脳医学、心理学は人間の精神について科学的に研究を進めており、大いに参考になる。
人の心は無意識の情動と意識の感情部分に分けられ、無意識部分のコントロールが大切なのだ。
無意識を手懐ける(てなずける)ための情緒コントロール法の開発が社会の安定に重要で、この章以下のテーマになる。
(なお、この部分が前に紹介した仏教的な心のコントロール法と重なってくる)

(今日はここから)
第三章;限界突破のための個人心理(準備編)、否定と肯定で分かるあなたの心と脳の仕組み
否定はストレスを産み、肯定はストレスを解除する。

(内容を一言で要約すると)
心に「感情」の部分に付いて更に詳しく検討し、そのコントロール法を提示する。
まず心のメカニズムである恐怖、抑圧、ストレス、愛情、感謝、リラックスなどを検討する。
感情をコントロールする上で極めて重要な(仏教的)「意識化、脱同一化、脱自動化」を行えるよう身体的なトレーニング法を考える。

(第三章のあらすじ)

1.感情は我々自身の内部状態が好ましい状態なのかどうかを教えてくれる。
喜びは肯定的で生理学的に最適に調整され心拍数も安定している状態である。
悲しみは否定的で機能的不均衡の状態を意味し、心拍数は不安定になる。
2.第二章で説明した情動と感情をもう一度区別する。
感情は高等生物しか無い。
人は経験したことについて感情とセットで記憶する。
これを連合学習と言う。
この仕組みがあるので人間は行動を計画する能力、つまり文明の力を発揮する。
また記憶は感情と結びつけられており、身体的反応である情動も感情とともに記録される。

3.恐怖などの否定的な感情は生物の存在にとって必要不可欠なシステムです。
恐怖の条件付けはたった1回だけで成立し、慣れによって徐々に消滅する性質がある。
ただし、脳神経細胞の活動を記録すると恐怖は発言を抑える事は出来ても物理的に消し去ることはできない、ということが分かる。
これが心的外傷トラウマの正体だ。
恐怖は感情的には正しく奥深い本質は善である。
恐怖心を抑制することは意識理性を担当する前頭前野部分の仕事だ。
その仕事がうまくいくためにはストレスをうまく扱うかどうかにかかっている。

4.ストレスとは嫌悪や恐怖刺激に対する生理的反応を指した言葉だ。
ストレスが生じると脳も身体もすべて戦闘モードになり、ストレスが解消されると休息モードになる。
強いストレスが生じるとそのトラウマを抑制する前頭前野部分が不活性化し、トラウマを再生する扁桃体が活性化される。
これによって恐怖に対応する身体的反応が起きる。
そしてそれはますますストレスを高めるのでスパイラル的に扁桃体が活性化していく。
強いストレスを感じている状態では原始人的な状態になる。
その状態は第二章の集団心理に似ており、「断言、反復、感染」を容易に受け入れる形になる。
すなわち怒りや恐怖などの否定的感情をあおるような言葉が極めて受け入れやすくなる。
さらにストレスが高まると免疫機能が低下する。
また前頭前野部分は計画、推論、意思決定等に関与するので、そこが弱まると人は理性を失い思考能力も低下する。
長期的な強いストレスは脳の海馬部分に深刻なダメージを与える。
逆に人は自分が本当に楽しい心から好きだと感じられる事をやっているときは最大限の能力を発揮することを意味する。
社会全体で嵩ストレス状態が長く続けば社会全体が衰退する。

5.一方で多少のストレスはむしろ能力を強化し成長を促します。
意識的記憶を担当する脳の海馬部位は、日中に記憶したものを睡眠中に長期記憶として大脳皮質に送る。
記憶にも訓練が必要で、訓練と休息の繰り返しが能力増強の正しい筋道といえる。

6.心理学用語の「抑圧」は無意識の内に事実を否定するような場合をいう。
一般に「抑圧」とは意識的に抑圧することをいう。
どちらの場合も「抑圧」は否定することで、何らかのストレスを生む。
フロイトは「自分とって嫌なことは無意識に拒絶する」ことを抑圧といい、それがトラウマとなる、と言っている。
ユングは自分の個性的性格を抑圧するとその原初の性格が反発し、反乱を起こし、ストレスを生む、という。
一般的な意味での抑圧は例えば専制君主が国民に圧政を敷く要な場合を言う。
この場合は心理学の意味のように無意識の抑圧ではないが、国民は強いストレスを感じることには変わりない。
また、逆に君主の方も革命を心配してストレスを生む。
この場合「天、民を怜れむ、民の欲するところは、天、必ずこれに従う」というシナの教えの通りの結果になる。
その点はユングが言う個人の性格抑圧と同じ結果で、君主が倒されるのと同じように意識も無意識に蹂躙される。
なお、劣等感も優越感も抑圧であり、否定であって、その人は身体的な反乱で不調和に陥る。
(前回の仏教の説明の通り、劣等感も優越感も妄想であり、他人の評価を前提としている。
こういう妄想を断ち切り、現実を認識してそれに立ち向かうことに集中する)

7.抑圧の反対は「愛と感謝、共感」などの肯定的感情だ。
肯定的感情はストレスを解除して心身安定や免疫機能向上をもたらし、否定的感情は心身の不安定化や免疫機能の低革もたらす。
辞書によれば「愛」とは「誰かを大切に思う気持ち」のことを言う。
同じく「感謝」とは「何かについてその重要性や意味を理解すること」とある。
つまり、愛も感謝も「高く評価する」と言う意味で、最大限の肯定となります。
それでは他人を大切にし、その重要性を理解すればいいか、又は自分に対しそうすればいいか、となるが、それは現実的でない。
バランスが取れている必要がある。

8.人は肯定的な感情を持つ時、その能力を最大限に発揮します。
だから基本的には人生全般において嫌な気分にさせる人と接する機会を減らし、
愛情や感謝や共感を覚えることの多い人と接する機会を増やすことがよいということになる。
では嫌な気分にさせる人と接する必要がある場合はどうすればいいか。
まず、可能な限り距離を置くこと、不満に思うことをできるだけ穏やかに表明すること。
相手と接していても、自分の感情をなるべくコントロールして穏やかにしておく。
ただしときには怒りをあらわにする方が良い場面もある。
感情が穏やかであればその場面を間違いなく選択できるし、すぐ元へ戻ることもできる。

9. 背反する愛や感謝の肯定的感情と抑圧的な否定的感情は、結局人と人の距離をどうするかという問題になる。
結論的には自分も相手も抑圧しすぎない関係を基本とする。
ただ多少の抑圧、多少のストレスは人間の能力を高めることになるので、ほどほどの抑圧が最良だ。
良い抑圧は自分と相手のお互いの許容範囲をお互いに配慮しあうことで生まれる。
あるいは自分と他者の両方とも同時に肯定する立場でバランスを取る、こういう態度がよいだろう。
まとめると1つは「人と人との間には最適な距離があること」
 2つは「その距離はその人々の心の有り様によって変化する」ことだ。
これは人と人との関係ばかりでなく人と組織、 人と物、人と国、国と国の関係にも当てはまる。

10.感情コントロールを考える上で非常に便利な言葉を紹介する。
1つは「脱同一化」2つめは「脱自動化」です。
脱同一化の意味は次の通り
「自分を悩ませる感情、記憶、思考などはすべて自分がそれに同一化しているからであって、
それらの悩みからの究極的な解消は同一化から離れることである。
それらは自分でないことに気づきそれらを脱落させていけば良いのである」

脱自動化の意味は次の通り
「自動的に沸き起こってくる知覚や反応のパターンを観察することによって、そこからの解放がなされると言う考え。
同一化のほとんどが無自覚に習慣的になされているものであれば脱同一化と脱自動化はほぼ同じことを言っていることになる。」
すなわち否定的な感情を生む自分の心の部分が、自分とは違うものだと意識的に認識し客観視すると言う事です。
「肯定思考」とは肯定的な思考をしようと頑張ることでなく、心に湧いてくる思考の内、肯定的な思考だけ採用し否定的な思考は排除してしまうと言うことだ。
また無意識の内容を意識化することで無意識と意識を統合する、または手なづけることができる。
その結果は精神が安定すると言うことになる。
無意識を否定するのでなく無意識に対してもその存在を認め肯定的に捉え、なおかつ適当な距離を置く。
適当な距離を置く、という点では人と人の関係に似ている。

11.宗教の役割は次の通り。
「個人的無意識および集合的無意識の強大な存在を宗教的なシンボルを与えてイメージを作り、
それによって元型的(原初的、自然的)なものを意識化させ、何とかそれらとうまく付き合い、その結果心理的安定を得るものだ。
しかし科学技術の発展によって宗教は軽んじられるようになってしまった。
今後は科学技術の発展と宗教的なものとが共存し、科学技術の方が補完的なものとなっていくだろう。

12.無意識は自分の強い味方であり無視したり抑圧したりすると暴れるが肯定的に高い評価を与えると大いに力を発揮してくれる。
高い評価とは愛情や感謝などの最大限の肯定の気持ちで、ストレスの解消によって前頭前野の活性化を通じ精神を秩序だてる。
例えば、嫌な気分になっているときは、それを認め、肯定することで嫌な気分を起こしている心の部分を肯定することになるから心は落ち着いてくる。

13.イメージトレーニングはスポーツやがん治療で行われ、条件によっては効果が実証されている。
このトレーニングでも無意識に働きかける方法を取っている。
効果的なのは実践練習とイメージを組み合わる方法だ。
がん治療の場合は例えば、放射線治療と組み合わせて、その治療によって病気が良くなる、というイメージ治療を行うことだ。
人間の無意識分野を味方につけることの重要性がわかる。
但し、あくまでイメージだから必ず良くなるとは言えず、宗教宣伝のように万能ではない。
「信じ方が足りない」等と言われるが、それは逆に一種の抑圧として作用するから無意識は当然反乱を起こし、上手く行かないのだ。

 


(要約引用終了)