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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)7月7日(金曜日)弐
通算第5344号
(見出し)
「西側文明は危機にさらされている」とトランプ大統領の「ワルシャワ演説」
「生き延びようとするなら、行動しなければならない」
(私のコメント)
世界の動きは全部つながっていて、風船のようにどこかを押せばどこかが膨らむ。
日本ではトランプ大統領のワルシャワ演説は全然話題にならないが、今後の世界を読むには大変重要だ。
結論を先に言えば、シナがこれで楽になる、シナの工作が効いている、ということだ。
ということは、日本には不利に働く。
この演説の後に行われたG20の会議で安倍首相は習近平中国主席に対し、シナが進める「一帯一路」計画に協力するといった。
これはシナに媚びを売ることになるが、これはワルシャワ演説でアメリカがロシアと敵対することを止めないことがはっきりした、ということもある。
今はアメリカは一帯一路もAIIBも不参加を表明しているが、突然態度を変えるかもしれないのだ。
アメリカ国内のキッシンジャーをはじめとする親中国派と共和党の反ロシア派の力が強く、シナの得意の裏工作の効果もあってトランプさんも動けない。
本当はトランプさんは苦しんでいる製造業の労働者などから支持をを集めて大統領になったのだから、反中国親ロシアなのだ。
親ロシアということは欧州や中東はロシアに任せてアメリカは軍隊もカネも出さない、ということだ。
外国に介入するかねがあったら国内の困っている人々に公共投資などで雇用を増やせ、というのがトランプ支持者の言い分だ。
反中国のアメリカ労働者はご存知のとおり、キッシンジャーの後ろにいる金融資本がシナに工場を作って安い品物をアメリカで売り、大儲けしているのを怒っている。
つまり、反中親ロと親中反ロのせめぎあいで少し風向きが親中に動いた、ということだ。
北朝鮮情勢もこの底流の上にあって中露は同盟関係を固め、北朝鮮を支援するだろう。
そうなると、アメリカはまた風向きが変わって反中親ロの方向に向かうかもしれない。
日本はそうしたアメリカの動きに右往左往しなければならない。
これに派生して、安倍政権や経済問題など書くべきだろうが、長くなるのでまた次回にします。
(私のコメント終)
(引用開始)
(見出し)
「この演説はかつてないほどに思想的である」とロシアのメディアが分析した(プラウダ英語版、7月6日)。
中欧十二ヶ国の首脳を集めてワルシャワで開催された「米・中欧サミット」で、トランプ大統領はNATOの防衛義務を果たすと明言し、西側の危機に団結して立ち向かうことを述べた。
「西側の文明はテロリズム、ハッカー、そして官僚主義の肥大化による機能不全などによって危機に直面している。生き残ろうとする意思がこれほど重大な意味を持つ時代はない」と、レトリックで飾られた演説ではなく、具体的行動を示した内容となった。
ポーランドの集会では民衆から熱烈は拍手が起きた。
ロシアのウクライナとシリアにおける軍事行動を非難し、イランの行為を批判する一方で、トランプはNATOの一層の防衛努力を訴えた。
これまで報じられてきた米露緊張緩和のムードに水を差し、明らかにロシアとは一線を画する演説内容だった。翌日に予定されたプーチン大統領との初会合への強い牽制でもある。
NATO諸国の疑念は、米国の防衛関与が低減してゆく不安、ウクライナ問題からの逃避にあり、アメリカンファーストとはNATOへの関与否定に繋がることだった。
しかしトランプはNATO条項第五条を遵守すると確約し、欧州における米軍のプレゼンスは継続されると確約した。同時にロシアとの協調路線は大幅に後退させたことを意味する。
大統領選挙中のロシアによるハッカー妨害を「ロシア一国の犯行だったという証拠はない」としてロシア糾弾を避けてきたトランプだけに、この演説は路線転換にあたると見られる。
▲ポーランド国民はトランプを熱狂的に迎えた
トランプ大統領のワルシャワ演説は、かくしてアメリカンファーストではなく、NATO諸国との共存、共同防衛の重要性を訴える結果となった。
「2018年の米国の中間選挙はプーチンに妨害させない」とも発言し、米議会指導層からも歓迎された。
トランプのワルシャワ演説はクラシスキ広場で行われ、2014年にオバマ前大統領がおこなったザムコウィ広場を避ける演出も行い、またユダヤ人団体はゲット訪問を回避しているとトランプを批判していたが、長女のイバンカが代理にホロコースト記念碑を訪れ献花した。
「欧州防衛はカネの問題ではない。自由を守るという意思の問題である」としたトランプは、NATO諸国のGDP2%の防衛負担義務を果たしていない国々への批判を展開してきた。
トランプは続けてこう述べている。
「中欧諸国はベルリンの壁が崩れてから28年を経過したがまだ経済も精神も完全に回復したとは言えないだろう。そのうえ新しい形態の戦争、ハッカー、テロリズム、危険思想の蔓延と言った見えない脅威に晒され続けている。ロシアの影響力はそればかりかエネルギー供給の面でロシア依存度が高いという脆弱性を抱えている。今後は米国からのガスへの切り替えという選択肢により資源安全保障も考慮されるべきであろう」。
ワルシャワのマリオットホテルに旅装を解いて、16時間滞在したトランプは次の訪問地ハンブルクへ向かった。
(引用終了)
(要約引用開始)
ロシア政治経済ジャーナル No.1514
2017/3/2
【RPE】★トランプ・クーデター~中国は、いかにトランプを懐柔したの
か???
中国は、どうやって反中トランプを軟化させたのでしょうか?
7つ理由があります。
★トランプ・クーデター~中国は、いかにトランプを懐柔したの
か???
全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!
北野です。
トランプ大統領の大戦略は、
「ロシアと和解し、中国に勝つ」
です。
ところが、大統領就任後わずかな期間で、トランプは、
「ロシアには、より厳しく、
中国には、より優しく」
なっているのが、誰の目にも明らか。
トランプさん、昨年12月時点では、
「『一つの中国』の原則を認めるかどうかは、ディール次第」
といっていた。
ところが、安倍総理と会談した前日の2月9日、一転
「『一つの中国』の原則を尊重する!」
と習近平に電話で伝えた。
一方、ロシアはどうでしょうか?
ロシアでの「トランプ支持率」は、ほぼ100%だろうと思います。
皆、「親ロシアのトランプなら、制裁を解除してくれるだろう」
と期待している。
しかし、ロシア国民の期待は、徐々に幻滅に変わりつつあります。
まず2月2日、ヘイリー新国連大使は、こんなことをいいました。
<モスクワはおそらく、トランプ大統領とその政権によって近い
うちに金融経済制裁が撤廃されるのではないかという幻覚からつ
いに目を覚ました。
2月2日にニッキー・ヘイリー米国国連大使が行った最近の声明は、
このことを明確にした。
「クリミアはウクライナ領の一部です」。
ヘイリー大使は国連安全保障理事会を前に、就任後初となる公式
の場での発言で、このように宣言した。
「クリミアをめぐり我が国が科した制裁は、ロシアが同半島の統
治権をウクライナに返すまで継続するでしょう」>
(ロシアNOW 2月13日)
ロシアは、クリミアを「永遠に返さない」でしょう。
つまり、ヘイリーさんの発言は、「制裁は永遠につづく」という
意味である。
次、2月13日、「親ロシア」で知られるフリン大統領補佐官が辞任
した。
これもロシアには痛手ですね。
というわけで、トランプ政権は、
「ロシアには、より厳しく、
中国には、より優しく」
なっている。
問題は、この現象が「自動的に起こっているわけではない」と
いうこと。
明白に「中国の工作によって」起こっている。
中国は、トランプの中国への「敵意を弱め」、
一方でロシアへの「敵意を強める」ことで、自国を救おうとして
いるのです。
「トンデモ、トンデモ、トンデモ~~~~~~~!!!」
新しい読者さんからの叫び声が聞こえてきます。
これ、私だけがいっているのではありません。
BBCが報じているのです。
▼中国は、いかにトランプを懐柔したか???
BBC News 2月27日付で、キャリー・グレイシー中国編集長は、
「中国は、どうやってトランプの反中を変えたのか?」
について、
「7つの理由」
をあげています。
長い記事ですので、要約してみましょう。
興味深いところは、引用します。
そして、原文アドレスを最後にはりつけておきます。
興味がある方は、全文読んでみてください。
中国が、トランプの反中を軟化できた一つ目の理由は?
<1. 家族や友人を取り込む>
中国は、トランプの家族を取り込むことにしました。
家族とは具体的に、娘のイヴァンカさん、彼女の夫クシュナー
さん、もう一人の娘ティファニーさんです。
<駐米中国大使の崔天凱氏は、トランプ大統領の娘イバンカさんに
巧みに手を差し伸べた。
ワシントンの中国大使館で行われた春節の祝宴にイバンカさんが出
席した姿は広く報道され、イバンカさんは両政府の分断に橋を渡し
た。
イバンカさんの夫、ジャレッド・クシュナー氏もまた、中国事業の
パートナーを通じて中国政府につてを持っている。
さらに、トランプ大統領のもう1人の娘ティファニーさんは、ニュ
ーヨーク・ファッション・ウィークで中国人デザイナー、タオ・レ
イ・ウォン氏のショーをあえて最前列で鑑賞した。>
そして、共産党の指令を受けた中国企業群も、いっせいに「アメリ
カに投資し、トランプさんを助けます!」と宣言しました。
<トランプ氏の私的な人脈を強化するため、中国で最も著名な起業
家のジャック・マー氏はトランプ氏と会談し、自身が所有する電子
商取引サイト、アリババで米国の商品を販売し米国に100万人規模
の雇用を創出すると約束した。
中国では民間企業にさえ共産党の末端組織が存在しており、国家の
戦略的利益となると政府の命令に従うよう求められる。
ジャック・マー氏は任務を背負っており、政府の方針にも沿ってい
た。
ニューヨークのタイムズ・スクエアの屋外広告に、トランプ氏への
春節の挨拶を掲載するため資金を提供した他の中国系企業100社も
同様だった。>(同上)
<中国では民間企業にさえ共産党の末端組織が存在しており、国家
の戦略的利益となると政府の命令に従うよう求められる。>
この部分、非常に大事ですね。
中国では、どんな巨大企業のトップでも、習近平の命令にはさから
えない。
2番目の理由は。
<2. 贈り物をする>
これは、なんでしょうか?
<トランプ氏の企業帝国は物議を醸しているが、中国ではトランプ
氏の商標に関する裁判が複数、棚上げ状態になっている。
中国政府は、裁判所が共産党の影響下にあるという事実をはばから
ずに認めている。
(中略)
トランプ氏の商標登録の場合、必要な手続きは昨秋、派手な告知
もなく迅速に行われ、裁判はトランプ氏の勝利で先週、集結した。>
(同上)
習近平は、裁判所を動かして、トランプの司法問題を解決し、喜ば
せたと。
さすがは「人治国家」中国。
3つ目の理由は、
<3. 必要な時まで声は荒げず>
これは、何でしょうか?
トランプさんは、明らかに中国を挑発していました。
しかし、中国は、挑発に乗らなかった。
<大統領選挙活動中ずっと、中国を泥棒だとか貿易の強姦魔だと
呼び、台湾について中国が頑なに守り続けてきた立場に挑み、中
国を侮辱し、脅し続けたのだ。
政府関係者はまた、南シナ海での取り組みを強化すると警告もし
ていた。
しかしその間中ずっと、中国政府は鉄の如き自制心と抑制力を見
せていた。>(同上)
<中国政府は鉄の如き自制心と抑制力を見せていた。>
実に立派です。
これぞ「老子の戦略」ですね。
4番目の理由。
<4. 台本に納得するまでは語らず>
これは、トランプが「『一つの中国』の原則」を認める状況になる
まで習近平は登場しないということ。
<ついにトランプ大統領と習国家主席との電話会談が実現した時、
中国は自国が大切にしてきた「一つの中国」政策への米国の支持
をあらためて取り付け、2人の出会いを尊厳あるものにもできた。
習国家主席が決然とした忍耐強い役者であるという評判は、より
一層高まった。
トランプ大統領は、台湾について新しい立場を取ると話していた
が、そのような発言は控えるに至った。>(同上)
5番目の理由。
<5. 甘い言葉は効果があるところで>
これは、「協力できるところから、協力関係を深めていこう」と
いうこと。
アメリカと中国が協力できるのは、もちろん「金」がらみ。
<この電話会談以降、米中政府間では活発なやり取りが行われ
ている。
新たに財務長官に就任したスティーブン・ムニューチン氏は、
中国の主要人物複数と経済政策について協議しており、ティラ
ーソン氏も中国の外相である王毅外交部長や上級外交官の楊潔
?と会談を行っている。
中国政府は、「習主席とトランプ大統領の間で達した合意」、
つまり「不衝突、不対抗、相互尊重、相互利益への協力」を特
徴とした関係の実現について協議を始めている。>(同上)
6番目の理由。
<6. 可能なものを与えよ>
これは、「口でいうだけでなく、実際にアメリカに与える」と。
<実際面では、相互利益というのはつまり、可能な際は常に譲歩
や協力をするということだと中国は理解している。
そして米国が懸念するある領域において、中国は協力する意思を
すでに示している。
北朝鮮からの石炭を輸入停止にすることによってだ。>(同上)
ホントに輸入を停止しているか、大いに疑問ですが・・・。
少なくともトランプ政権は、信じているのですね。
7番目の理由。
<7. 相手の弱みを自分の強みに>
これは、なんでしょうか?
RPEでも何度か触れましたが、
「評判の悪いトランプさんと『逆』のことをする」。
具体的には?
トランプは、「ナショナリスト」なので、
習近平は「私はグローバリストです!」
と宣言する。
「中国の夢!」(=ナショナリズム)は、どこにいっちゃった
のでしょう?
<世界の舞台では、習主席は、自分がドナルド・トランプとは
違うということを巧みに示した。
ダボスでの世界経済フォーラムで、習主席がグローバル化と自
由貿易を擁護したのは有名な話だ。>(同上)
というわけで、習近平政権は、トランプが大統領になってから、
「国をあげて」
アメリカ新政権「懐柔」に奔走してきました。
そして、大成功をおさめた。
「中国の勝利」と断言しています。
<こうした戦術でこれまで上げてきた効果について、中国政府
は非常に満足だろう。
しかしこれは複数参加型の多面的なゲームで、長期的には多く
の危険や罠が存在する。
中国は、危険をうまく中和し、トランプ大統領就任1ヶ月目と
いう機会を巧みに利用した。
第一ラウンドは中国が勝利した。>(同上)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
しかし、キャリー・グレイシーさんは、「戦術」的勝利とはっき
り書いています。
中国は、依然としてアメリカの戦略上「最大の敵」であることに
変わりありません。
ですから、米中関係の平穏は長つづきしないでしょう。
▼日本外交は、常に慎重に
というわけで、トランプの厳しい反中姿勢を軟化させた中国外交
について見てきました。
トランプを軟化させるために、「国をあげて」取り組む姿勢は、
実に見事です。
日本では、
「習近平は、バカだ!」
「中国は、もうすぐ崩壊する!」
「中国は、民度が低い!」」
などといった話が喜ばれます。
しかし、実状を知っている人は、「まったく侮れない」ことを理
解しています。
正直、外交力、工作力、諜報力で、日本は中国の足元にもおよび
ません。
「プーチンを悪魔化させ、米ロ関係を破壊する。
トランプの身内を懐柔し、米中関係を改善させる。
結果、米ロを戦わせ、中国は漁夫の利を得る」
という中国の作戦は、現状成功しています。
日本は、アメリカとの関係をさらに改善しつづけ、
ロシアと和解し、中ロを分断し、
その上で、中国を挑発しないよう、常に慎重であるべきです。
●出所アドレスはこちら。↓
http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-39099806
(要約引用終了)