1809-2-1345-9/2本要約田中英道著「リベラル不要」

(優秀本の要約内容紹介)
(著者と題名)
田中英道著「日本人にリベラリズムは必要ない。リベラルと言う破壊思想」
(私のコメント)

この本は、現在世界をリードしているリベラルという思想がいかに悪い思想かを解説している。
第1章ではリベラリズムがだめな思想だ、ということの解説。
第二章では日本にリベラルが生き残る理由。
第3章では今の芸術が反体制反権力をありがたがる理由。
第4章ではリベラリズムの呪縛から逃れる方法。


(私のコメント終)

(要約引用開始)

序章アンチリベラルにかじを切った国際社会

1.基本的にリベラルという言葉は「自由」を意味している
今のリベラルはその意味と違って、物事を常に批判的に見るところに大きな特徴があります。
組織や共同体からの自由を目指す人々のことをリベラルと呼んでいる。
2.現在のリベラルの本質は「隠れマルクス主義」だが、リベラルを標榜するリベラリストは、自分たちがサヨクだとかマルクス主義者だとか言われることを嫌う。
だが、本質はズバリサヨクであり、マルクス主義者だ。
マルクス主義ソ連崩壊で明らかになったように、プロレタリアート革命が幻想であることがわかり、誰も信用しなくなった。
そこで、彼らは中立を装ってリベラルを主張するようになったのだ。
3.マルクス主義が標榜する革命の代わりに、リベラルは「フェミニズム」(男女同権論)、「ジェンダーフリー」(社会的性別からの解放)、「多文化主義」などを推進する。
いわゆるリベラルは、資本主義に生じる矛盾の結果をプロレタリア(労働者)の「必然的貧困」でなく、「人間疎外」に変えていった。
人間疎外はマルクスの哲学用語として以上に流行した言葉だ。
労働者の貧困は、資本主義体制でも解決され、労働者は豊かになった。
従って必然的貧困をとなえたマルクス主義は間違いだと証明されてしまったので、人間疎外にすり替えたのだ。
出世ができないとか福祉が充分でない、とか普通社会に生きていれば皆不満を持つ。
それをリベラルは利用して疎外と呼び、「将来人々が完全に満たされる世の中になる」と言う幻想を撒き散らす。
その幻想から共同体や社会、国家を批判し否定する。
4.注意しておくべきは、ここで言う「批判」という言葉です。
私たちは批判されるのは「批判される側に問題があるからだ」と考える。
だが、リベラルにとって重要なのは、その問題ではなく批判する行為そのものなのです。
リベラルには「批判理論」という、批判すること自体が意味と意義を持つ、という理論があります。
5.共産主義ソビエトが崩壊したため、労働者による革命という考え方が間違いであることがはっきりしました。
共産主義は資本主義の矛盾から必然的に起きる革命」で世の中を変革しようとした。
ところがそういった経済による革命が起きないことがわかったので、隠れマルクス主義者であるリベラルはその対象を経済から「文化」に変えたのだ。
フェミニズムジェンダーフリー多文化主義は、リベラルが文化の元になる「伝統」の破壊に走ることの表れだ。
6.リベラルに対抗する保守主義者は、彼らが文化を革命の対象にしていることに気づいていない。
また、文化そのものも理解していない。
従ってリベラルから文化批判を仕掛けられても反論のしようがなく、お手上げの状態になってしまうのです。
リベラルが文化に対する批判を意図的に行ってきた意味を理解できず、放置してきたために、今や修復不可能と思われるほどに伝統と文化は破壊されてしまいました。
7.批判理論の背景には「フランクフルト学派」というものがある。
ドイツでナチスが台頭した時期、ユダヤ系学者グループは反ユダヤ主義政策に追われてアメリカに亡命していきました。
これをフランクフルト学派といい、フェミニズムジェンダーフリー多文化主義はすべてこの学派から出た理論によっている。
日本でも1960年代から70年代の全共闘世代は、ほとんどフランクフルト学が洗礼を受けている。
フランクフルト学派は「プロレタリア革命」を叫ばないので、大衆運動を行わず大学の教員や学生などを始めとするインテリ層を理論普及のターゲットとした。
サヨク政党の衰退に反比例するようにフランクフルト学派は日本の学会に深く根をはって行った。
8.フランクフルト学派は、マルクス主義者の哲学者ルカーチジェルジが、ドイツのフランクフルト大学で1923年に設立した「マルクス研究所」が始まりです。
1930年にフランクフルト学派の中心的存在になったマックスホルクハイマーは、マルクスの分析は現状と異なり、労働者階級は革命の前にはならないと考えた。
そこで彼はマルクス思想を書き換えた。
古いマルキストは敵は資本主義だったが、新しい敵は「西欧文化」となった。
また、古いマルキストにとって権力掌握の方法は暴力革命による政権転覆だったが、新マルキストは権力掌握に暴力を使わず、長期にわたる忍耐強い作業が必要だ、とした。
勝利の大前提は、西洋人がキリスト教精神を捨てること、文化教育制度を掌握することだ。
フランクフルト学派は、ソビエト連邦崩壊のはるか以前にマルクスの理論には問題があることを見抜いていた。
その上でフランクフルト学派の目的とターゲットは、革命でなく長期間にわたる文化破壊により西欧キリスト教社会の破壊ということになった。
9.注意すべきは、フランクフルト学派の有名人であるホルクハイマー、アドルノ、 フロム、ライヒ、は皆ユダヤ人です。
即ち、西欧キリスト教社会の破壊、というのは昔から続いてきたユダヤ教キリスト教の戦いの延長線上にあると言うことだ。
なお、マルクスユダヤ人であり、ロシア共産主義革命を推進したレーニンやトロツキーその他幹部もユダヤ人だった。
従って、ユダヤ教の影響が背後にある。
10.アメリカに上陸したフランクフルト学派は、早速アメリカの文化破壊に取りかかった。
フランクフルト学派が編み出した文化闘争の新兵器の中で、特に強力なものの1つが「批判理論」でした。
「現代の人間はすべて、自然からも社会からも疎外されている」という考え方で、マルクスの哲学用語である「疎外」を使っている。
社会からの疎外をなくすためには「社会を作り上げてきた伝統的な文化を否定する」ということから始めました。
文化を否定して破壊すれば、社会は壊滅します。社会が壊滅すれば疎外の原因はなくなります。
この理論は戦後日本の日本の知識人に影響を与え、彼らが批判したのはフランクフルト学派の批判理論によっている。
即ち、批判理論の定義によれば、「西洋文化の主な要素を完全否定する批評」となるのだが、その内容は次の通り。
キリスト教、資本主義、 権威、家族、家父長制、階級制、道徳、伝統、性的節度、忠誠心、愛国心国家主義、相続、自民族中心主義、因習、保守主義など」
11.この批判理論こそは、戦後のアメリカと日本が共有することになった強力な思想で、左派勢力にとっては選挙などの政治運動よりも教育やマスコミなどの方が主戦場になっている。
12.フランクフルト学派とほぼ同時期に、イタリア共産党書記長だったアントニオグラムシという人がいて「獄中ノート」というものを書いた。
これが二十世紀のマルクス主義の経典の1つになっている。
この人もロシアに亡命してソビエトロシアの状況をつぶさに見て、「恐怖政治でしか体制を維持できないレーニン主義は失敗する」と確信した。
グラムシは労働者階級が革命を起こすことが幻想だと知ると、革命の新しい担い手を探した。
そして新たに、歴史的に反主流派とされる階層、男性に対する女性、 多数民族に対する少数民族、犯罪者、などをすべて担い手とした。
犯罪者が悪いのでなく犯罪を起こさせた社会が悪いのだ、という理屈だ。
「若者は皆疎外感にもがき苦しんでいる」だから犯罪に走るのだ。黒人や貧困、世の中の敗者、脱落者こそが革命の英雄になる。
その場合、加害者は安穏と暮らしてきた保守的な階級なのだ。
13.グラムシはまず社会の文化を下から変える必要がある、と考えました。
そのために、芸術、映画、演劇、教育、新聞、雑誌、その他メディアなどを一つ一つ丁寧に攻め落としていき、革命に組み込んでいく、という作戦を主張した。
レーニンの革命は失敗したが、グラムシの革命は今なお受け継がれ多くの賛同者を獲得し続けている。
その顕著な例が、トランプ大統領が敵視する「ポリティカルコレクトネス」だ。
政治的に正しい」と言う意味で、「あらゆる場面で、人種、性別、文化、民族、年齢、宗教、などの違いによる偏見差別を含まない言葉を使え」とする考えだ。
典型的なのは、メリークリスマス、と言わずハッピーホリデー、といえ、というものだ。
これは失敗したプロレタリア革命に変わって考えられた、、革命の方法論の一つ、多文化主義によっている。
みんな誤解しているが、多文化主義は各国各民族の文化を尊重する、という思想ではありません。
多文化主義は「それぞれ異なる文化が傷つけ合わないように、すべての文化は均一化されるべきだ」という考えで、すなわち文化の破壊を目的としている。
ソ連が崩壊して保守派が左翼に勝利した、と思っている間に保守派は文化の面で既に敗北したのだがそれに気づいていない。
14.フランクフルト学派グラムシ社会主義運動において最も効果があるのは「文化の攻略」だと明言してきました。
それにもかかわらず保守派は金儲けと政治戦略だけに明け暮れている。
だが、トランプ大統領登場によってアンチリベラルの巻き返しが始まっている。
15.欧州連合EUもイギリスが脱退することによって、アンチリベラルの方向に舵を切った。
EUの推進する人権、多文化主義グローバリズム、などのアイデンティティ喪失政策は加盟各国とも今後否定されていくだろう。


(要約引用終了)